【股関節の痛みの部位と改善のための体操法】

股関節の痛みはどうして起こるのか?

股関節は肩関節と並んで、大きな可動域を持ち、いろんな動きが可能です。しかしながら肩関節と違い、常に大きな負担、体重を受けとめる関節の為、軟骨が減りやすく、さらに膝・足関節といった下部の関節の影響をも受けやすく痛みが発生しやすい関節と言われています。痛みの原因としては臼蓋形成不全によるもの、軟骨の摩耗などに原因するもの、さらに関節液、関節唇、股関節周囲軟部組織の損傷や過緊張などが原因と言われています。

【股関節の場所別痛みの対処法】
代表的な股関節痛の原因と股関節を自分で改善できる体操法
①股関節前面の痛みは鼠径部痛が多い
原因:1.大腿四頭筋と腸腰筋のコンビネーションが悪くなることにより起こる
   2.仙腸関節からの痛みや腰の4番目の神経からの痛み
対処法:四頭筋、腸腰筋の筋力アップ。長座で足裏と甲のケンカ
    仙腸関節の調整
    腹筋の強化と骨盤の歪みや足の長さの調整

②股関節痛における大転子周囲の痛み(股関節周囲軟部組織)
原因:靱帯の過緊張や股関節周囲にある筋肉の筋力低下および過緊張など
対処法:股関節の8の字ゆらし(椅子を使って)
    股関節周囲の軽いマッサージ
    股関節の可動域の調整

③股関節疾患からくる太もも前面の痛み
原因:腰椎からの痛みが多いように思われます。また姿勢動作による四頭筋の過緊張も原因では。
対処法:四頭筋伸ばし
    腰椎の過度の前弯の調整または骨盤の前傾の調整
    骨盤のゆがみと脚長差の調整

④股関節痛における外側面の痛み
原因:腰の4番からくる外側面の痛み
   外転筋の過緊張からくる外側面の痛み
   骨盤の歪み足の長さの違いからくる外側面の痛み
対処法:骨盤、脚長差の調整
    外転筋の調整(足の横上げ運動)
    股関節の可動域の調整(内旋制限を取る、股関節の8の字ゆらし)

⑤太もも後側の痛み
原因:腰の4番および5番の関係
   骨盤の歪みと脚長差
対処法:腰仙関節の調整
    骨盤の歪みや脚長差の調整
    腹筋、腹圧、殿筋の強化
    股関節の8の字ゆらし

【良い医師・治療家の選び方】
①治療法としては関節に負荷のかからない運動や、即ち体重をかけない、支点にしない、捻りを加えない、衝撃を与えない指導をして下さる医師及び治療家
②自宅でできる体操及び日常生活を指導していただける医師及び治療家
③質問を嫌がらない医師及び治療家
④日本の学会はもちろんのこと、世界の学会で認められた運動法であること
⑤治療計画を共に作って下さる医師及び治療家
⑥より高度・専門な治療ができる医療機関及び治療所を紹介して下さる医師及び治療家

【股関節痛を改善する正しい筋トレの方法】

考え方と対処法

今までの関節痛を改善する筋力トレーニングとして、上向きで足の上げ下げ、横向きでの足の上げ下げ、さらに殿筋を強化すると称して上向きで寝てのお尻の挙上がありましたが、この運動法は筋肉強化のためには激しい痛みが伴うとともに軟骨の減少を促進してしまいます。そこで我々が提唱するのは、足の横上げです。この体操で数多くの人たちが痛みを楽にし、手術を延期、さらに回避したという実績があります。
これにより股関節周囲軟部組織の筋肉、靱帯、関節包の強化が望めます。ぜひ試してみてください。

【股関節痛を改善するストレッチ】

従来のような足をまっすぐ伸ばしてかかとの突き出しで、太もも前面後面を伸ばす動きだけではほぼ効果は少ないと思います。私共は可動域に応じて外転内転により角度を調整した位置でのストレッチ。さらに大腿四頭筋を伸ばす為に起始部の伸展や大殿筋を緩めるストレッチを行っています。更に腰椎に問題がある場合は腸腰筋の調整も加えて下さい。

【股関節痛の正しいマッサージの方法】

股関節のマッサージはまず、股関節外側面(大転子周囲の痛み)における股関節周囲軟部組織を鼠径部に向かって軽くマッサージしてください。強い刺激を与えると筋組織や靱帯の損傷を招き、組織の緊張や機能低下をより高めますので、軽く行うのがポイントです。鼠径部に関しては鼠径部から太ももの内側に向かって軽く押し下げる、または撫でるような力でのマッサージをお願いします。

臀部に関しての原因はおそらく腰にあると考えますので、痛む方を上にして横向きになり、腰を上からお尻に向かって中等度の力でマッサージしてください。決してうつぶせになり腰を上から押さえてはダメです。股関節痛で腰に痛みがある人は、ましてや上向きで寝た際、テニスボールやゴルフボールを背中の下におかないでください。脊柱管狭窄症がより進行します。

【よくある質問】
Q.簡単な股関節の解剖とは
A.●骨組みとしては
 寛骨にある寛骨臼と臼蓋と大腿骨骨頭により股関節は形成されています
 ●靱帯としては
 腸骨大腿靱帯、恥骨大腿靱帯、座骨大腿靱帯、大腿骨頭靱帯など
 ●筋肉としては
 太もも前面の伸展筋、後面の屈曲筋、外側の外転筋、内側の内転筋や恥骨筋などがあります。

Q.股関節の痛みの原因としては
A.今までは軟骨の減りが主な原因と言われていましたが、現代では関節周囲軟部組織や関節包の滑膜炎、関節唇の損傷、インピンジメント、臼蓋形成不全などが上げられます。

Q.股関節の痛みの発生原因として
≪加齢≫
A.加齢は病気という方もいますが、全員が加齢により機能低下を感じるわけではありません。加齢を特別な要因として考えなくてもよいと思います。
≪筋力低下≫
A.一般的な学説としては、我々が通常持っている筋力の15%から30%の筋力があれば、日常生活をおくるに問題がないといわれていますので、ことさら筋力低下にとらわれる必要はありません。さらに股関節周囲軟部組織における筋肉や深層六筋、特に中殿筋の強化が必要といわれていますが、まず関節力の強化を行ったのち筋力強化を行うほうが関節に負担を与えず効果的な方法ではないかと考えます。それよりも関節力の低下に注意してください。
関節力とは、正常な関節可動域を保つことにより、現在持っている筋力を活性化できる力のこと。
≪体重増加≫
A.股関節痛を自分で改善できる最良の方法の一つは体重のコントロールすなわち減量を試みることです。例えば1㎏体重を減らすと股関節には5㎏~15㎏の負荷を減らすことができ、逆に1㎏増やすとその分の負荷が股関節にかかるということになるということを知って下さい。
≪姿勢の歪み≫
A.骨盤の歪みや足の長さの違いは股関節に偏った体重負荷を与え、関節を構成する組織の損傷をもたらしますので、かならず調整することをおすすめします。
≪炎症≫
A.股関節痛における炎症は急激な外からの力(事故・ケガ)や、慢性的な内からの力(日常生活における偏った使い方や仕事・趣味・スポーツなど)により起こります。
≪骨盤のゆがみや脚長差≫
A.偏った使い方や偏った体重の負荷により、痛みが発生する原因を引き起こします。

Q. 日常生活における股関節の働きは
A.膝関節と協力し
1.立ち座り(上下運動)
2.ふりむき、方向転換(回旋・回転)
3.上下への飛び、前後への跳び(空間移動)
4.歩く、走る(水平移動)
が考えられます。この際、股関節の関節力が低下すると、思い通りの動きがしにくくなりますので、関節力をアップしてください。

Q.股関節の正しいストレッチとは
A.ストレッチをする際には、各関節の可動域を十分確保したのち、行うことが必要です。簡単に言えば、ストレッチをした際、筋肉の起始、停止、運動点が伸びているということです。

Q.股関節痛予防のポイントは
A.股関節の主な動きは、肩関節と引けを取らないほど大きな可動域があります。そして働きは上下運動、回転廻旋運動、水平運動、空間移動といった動きや働きが可能です。
そこで予防のポイントは、関節周囲軟部組織の緊張を取り除き、柔軟性を高め、如何なる動作にも対応できるようにすることが大切です
①急な曲げ伸ばしをしない
②長時間同じ姿勢をとらない
③体重を増やさないように気を付ける
④股関節に捻りや無理な衝撃を加えない
⑤股関節に休息を与える
⑥股関節の可動域と痛みのチェックを怠らない(違和感や不安を感じたときはボディチェックを行う)
⑦股関節のケア体操を行う。代表的な体操として、骨盤と脚長差の足の横上げ

Q.体全体から見た股関節のボディチェック
A.①ハンマートゥはどちらか
 ②内旋しにくいのはどちらか
 ③太ももが細いのはどちらか
 ④開きにくい足はどちらか
 ⑤上げにくい足はどちらか
 ⑥あぐらがかきにくいのはどちらか
 ⑦腸骨陵の高さはどちらが高いか   など・・・

Q.ボディチェックの結果を基に、股関節痛を改善するケア体操は?
A.①ハンマートゥ
→骨盤の歪みと脚長差の調整をし、ハンマートゥの改善体操
 ②内旋しにくい
→内旋角の改善体操
 ③太ももが細い→
足の裏と甲のケンカ、弓ぞりケンカ
④開きにくい足
→膝関節での8の字ゆらし
⑤上げにくい足
→椅子に座って股関節の8の字ゆらし
⑥あぐらがかきにくい
→パトリック(4の字ゆらし)
⑦腸骨陵の高さ 
→椅子に座っての骨盤の8の字ゆらしとアイーン体操

Q.股関節痛の再発を防ぐには
A.ボディチェックが正常に近づいた時に再発の防止ができると考えます痛みや症状が改善したとしても、ボデイチェックの状態が改善していなければ再発のリスクが高いようです。ぜひボディチェックを習慣化して下さい。

その他に
①股関節に急激な刺激を加えない
②偏った使い方を避ける
③股関節になるべく捻りや衝撃を与えない
④股関節を支点にするような動きや運動はなるべく避ける(スクワットなど)