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「歩くと膝が痛い」 「正座ができない」 「階段の上り下りがつらい」
このように、膝痛という“出口”の症状は似ていても、その中身(原因・状態・経過)は実にさまざまです。
私たちの治療院にも、「膝が痛い」という”同じ訴え”で来院されるものの、状態は一人ひとりまったく異なる患者さんが訪れます。膝痛を正しく解消するためには、まず「自分の膝で何が起きているのか」を整理することが第一歩です。
今回は、膝痛で最も多い「変形性膝関節症」を紐解きながら、膝痛について、運動療法の可能性について解説していきます。
臨床経験40年の中で、来院数の多い順に並べると、膝痛の原因は主に以下のように分類されます。
この中でも、中高年の方を中心に圧倒的に多いのが「変形性膝関節症」です。 実際、当院を訪れる膝痛患者さんの多くも、このタイプに該当します。
もし以下の症状に心当たりがあれば、変形性膝関節症の可能性があります。
これらが単独、あるいは複数重なって現れ、最終的に「歩くのがつらい」「正座ができない」という生活の質の低下につながっていきます。
膝関節は、股関節のように自由自在に回る関節とは違い、動く方向が「前後の屈伸」にほぼ限定された関節です。
その理由は、前十字靱帯・後十字靱帯・内側側副靱帯・外側側副靱帯など、多数の靱帯によって強固に支えられているからです。さらに、前方には膝蓋骨(お皿)があり、後方へ過度に曲がらない構造になっています。
また、膝関節のスムーズな動きは、以下の組織が精妙に連携することで生まれています。
この「構造」を理解することが、痛みの本当の原因を知るカギとなります。
膝関節の骨の表面は、軟骨で覆われています。軟骨はショックアブソーバー(緩衝材)として、衝撃を吸収し、骨の摩耗を防ぐ役割を担っています。
一般的に整形外科などでは、以下のような説明がされがちです。
× よくある説明: 「加齢や使いすぎで軟骨がすり減る」→「骨同士がぶつかる」→「痛みが出る」→「だから手術が必要」
しかし、軟骨自体には神経が通っていないため、すり減っても痛みを感じることはありません。 私たちは、軟骨のすり減りそのものが痛みの直接原因ではないと考えています。
では、何が痛んでいるのか。 それは、膝関節を包み込み、内部の安定性を保っている「関節包」という膜や、周囲の靱帯・腱です。
長年の負担によってこれらが「硬くなる」「動きが悪くなる」(=拘縮:こうしゅく)ことで、以下の悪循環が生まれます。
逆に言えば、これらの拘縮(硬さ)を運動療法で解消できれば、軟骨がすり減っていても症状は改善していく可能性が高いということになります。
私たちは、症状がどのような診断名であっても、「まず手術ありき」ではなく、運動療法(保存療法)で改善できないか、その可能性を追求してきました。
その結果、当院における 膝痛の手術回避率は92%。
現在は、この数字を95%まで高めることを目標に、日々治療に真摯に向き合っています。
当院では、膝痛治療のひとつの明確なゴールを 「正座ができること」 に設定しています。
正座は、膝にとって「深い屈曲」「柔軟性」「安定性」のすべてが求められる、最も条件の厳しい動作の一つです。 この動作が可能になれば、「膝痛を克服した」と言ってよい状態に近づいたと私たちは考えています。
実際に、「手術しかない」と言われた状態からでも、正しい運動療法を継続することで正座ができるようになった方は多数いらっしゃいます。
「もう年だから仕方ない」 「変形しているから手術しかない」
そう言われて不安になっている方ほど、保存療法(切らない治療)という選択肢があることを知っていただきたいと思います。
膝痛は、正しく仕組みを理解し、一人ひとりの状態に合った運動療法を行うことで、まだまだ改善の余地があります。 一生自分の足で歩き続けるために。私たちとともに、あなたの膝と向き合っていきましょう。