「歩き方」を変えるだけで関節はもっと楽になる|43年間の治療経験から見えてきた適正な歩き方とは

【この記事の結論】

歩き方は、関節にとって「薬」にも「負担」にもなります。43年間、膝痛・股関節痛・脊柱管狭窄症の患者様を診てきた専門治療院の臨床経験から見えてきたのは、無理のある歩き方が長年積み重なることで関節への負担となる一方、適正な歩幅・歩隔(足幅)・歩数を知ることで、毎日の歩行そのものが関節を整える運動療法になるということです。本記事では、今日から実践できる歩き方の考え方をお伝えします。

痛みは、積み重なった無理からのメッセージ

前回の記事では、「痛み」は身体からのメッセージであることをお伝えしました。
最初は、ほんの少しの無理だったはずです。
歩き方の癖。
片足に体重をかける習慣。
少し内股ぎみの歩き方。
一つひとつは小さなことでも、それが何ヶ月、何年、何十年と積み重なれば、身体への負担は決して小さくありません。
変形性股関節症や変形性膝関節症、脊柱管狭窄症は、交通事故のような急性のケガとは異なります。
私たちは臨床のなかで、これらの症状は病気である一方で、「長年積み重なった慢性のケガ」のような側面があるとも感じています。
しかし、ここには希望があります。
悪い歩き方で身体が少しずつ変わるのであれば、良い歩き方でも身体は少しずつ良いほうへ変わっていく可能性があるからです。

「歩く」という、誰もが毎日続ける運動

眠らない人がいないように、歩かない人もいません。
食事や睡眠と同じように、「歩くこと」は毎日繰り返される生活そのものです。
だからこそ、歩き方が身体に与える影響は想像以上に大きいのです。
無理な歩き方を続ければ、その負担は毎日積み重なります。
しかし、関節に優しい歩き方が身につけば、その一歩一歩は身体を整える時間へと変わります。
私たちは、歩くことこそとても大事な運動療法の一つだと考えています。

43年間の臨床で見えてきた「適正歩幅」

では、良い歩き方とは何でしょうか。
私たちが43年間見続けてきた中で、とても重要だと感じているのが「適正歩幅」です。
歩幅が大きすぎれば、股関節や膝に大きな衝撃やねじれが生じやすくなります。
逆に小さすぎる歩幅では、股関節本来の可動域を十分に使えず、身体全体が硬くなってしまいます。
大切なのは、「大股で歩くこと」でも「小股で歩くこと」でもありません。
自分の身体が無理なく前へ出せる自然な歩幅で歩くことです。
そして、歩き方は歩幅だけでは決まりません。
左右の足幅である歩隔が広すぎても狭すぎても、身体のバランスは崩れます。
さらに、一日に歩く歩数も重要です。
私たちは、
歩幅・歩隔・歩数
この三つがそろって初めて、「その人に合った歩き方」になると考えています。

歩くことは、筋肉を育てる時間でもある

歩くことの影響は、股関節や膝に限ったものではありません。
太もも、お尻、ふくらはぎ。
歩くたびに、これらの筋肉も自然に働きますし、血流が全身を巡ります。
つまり歩行は、毎日続けられる最も自然なトレーニングでもあります。
だからこそ、
「痛いから歩かない」
ではなく、
「どう歩くか」
を見直すことが大切になります。

歩く環境も、関節への負担を左右す

歩き方だけではありません。
歩く場所も重要です。
坂道
階段
砂利道
凸凹道
これらは股関節や膝へ予測しづらい負荷を加えます。
痛みがある時期は、まず平坦なアスファルトの道を選び、身体に正しい歩き方を覚えさせることを私たちはお勧めしています。
遠回りのようで、それが改善への近道になることは少なくありません。

「痛みが出る歩数」は身体からのサイン

「一日一万歩」
健康の目安としてよくいわれます。しかしながら、股関節や膝に痛みがある方には当てはまらないこともあります。
歩いた後に痛みが強くなるなら、それは
「歩きすぎですよ」
という身体からのメッセージかもしれません。
周囲に合わせるではなく、
自分に合った歩数を知ること。
これも運動療法ではとても大切です。

杖は「負け」ではなく、未来への投資

「まだ杖を使うほどではない」
そう考える方は少なくありません。
しかし、痛みを我慢して歩き続けることが、結果として関節への負担を増やしてしまう場合は少なくありません。
杖は、体重を分散し、歩行の安定性を高めるための大変便利な道具です。
私たちは、「いつまでも自分の足で歩き続けるための賢い選択」として、
必要な場面では杖を積極的に活用することをお勧めしています。

歩き方は「意識」だけでは変わらない

ここまでお伝えした歩幅・歩隔・歩数は、知識だけでは身につきません。
長年続けてきた歩き方には、股関節や骨盤まわりの筋肉、靱帯、関節包の状態が深く関係しています。
だからこそ、まず身体を整える。
そのうえで正しい歩き方を身につける。
この順番が重要になります。

「宅トレゆうき体操」でも歩き方を大切にしています

こうした歩き方の考え方は、これまでの臨床経験から生まれた「宅トレゆうき体操」の中でも大切なテーマの一つです。
関節を緩めることから始め、身体を整え、歩き方そのものを見直していく。
ご自宅で動画を見ながら、ご自身のペースで実践できる内容になっています。
「手術を勧められたけれど、まずは自分でできることから始めたい。」
「毎日の歩きを、身体を整える時間に変えたい。」
そのような方にとって、歩き方を見直すことは、未来の自分への大きな贈り物になるかもしれません。
▼ 宅トレゆうき体操はこちら

おわりに|今日の一歩が未来をつくる

歩き方は、一日で変わるものではありません。
しかし、一歩ずつ積み重ねることはできます。
悪い歩き方が長い年月をかけて関節へ負担を積み重ねてきたように、
良い歩き方もまた、少しずつ身体を整え、未来のあなたを支えてくれます。
だからこそ、今日の一歩を大切にしてください。
私たちは股関節痛・膝痛・脊柱管狭窄症の患者様の「歩く」を見つめ続けてきました。
これからも、一人でも多くの方が自分の足で歩き続けられるよう、その歩みを支え続けてまいります。