股関節の手術後、痛みが残るのはなぜ?|人工股関節置換術後の可動域とリハビリ

【この記事のポイント】

人工股関節置換術は、変形した関節を人工の関節に交換する手術ですが、周囲の筋肉や関節包の状態は手術前のままです。さらに、脱臼への不安から動かすことをためらい、筋肉がいっそう硬くなって機能が低下するという悪循環に陥る方もいらっしゃいます。四十数年の臨床を重ねてきた専門治療院として、術後のリハビリの重要性とともに、術前に股関節周囲の状態を整えておくことの大切さをお伝えします。

手術を受けない方も、受ける方も

医師に手術を勧められたものの、できれば手術は受けたくない。そのために運動療法に取り組み、今なお手術を受けずに過ごしていらっしゃる方々がいます。症状と上手に付き合っていらっしゃる方々だと思います。

一方で、手術を受けられる方もいらっしゃいます。手術を避けるために運動療法に取り組んでいたものの、症状が進行し、手術を選択される方々です。

ただし、前回もお伝えした通り、手術を受ければ解決、ではありません。手術後も、ご自身の身体をケアすることは必須です。

人工股関節置換術とは

変形性股関節症の手術にはさまざまな種類がありますが、現在の主流は人工股関節置換術です。文字通り、ご自身の股関節を人工の関節に交換する手術です。

手術によって、変形していた関節ではなくなります。臼蓋と骨頭が人工の部品に置き換わります。理論上は、これで痛みが消え、可動域も元通りになる、はずです。

しかし、これで解決ではありません。

筋肉と関節包は、手術前のまま

手術によって、切開する場所や組織へのアプローチはさまざまです。術式によって筋肉への影響は異なりますが、術後に筋力の低下や、周囲の組織の回復に伴う動かしにくさが生じることがあります。 

さらに、人工股関節を装着しても、周囲の筋肉や関節包は、手術前の状態のままです。そのため、術「脱臼が怖い」という悪循環後は股関節の動きが制限されることがあります。

関節そのものは新しくなっても、それを取り巻く組織が硬いままであれば、思うように動かせません。

「脱臼が怖い」という悪循環

そして、手術を受けた方の多くが、脱臼を心配されます。

その不安から、術後のリハビリがなかなか思うように進まないケースがあります。動かすことをためらうと、筋肉はますます硬くなり、さらに機能が低下します。

せっかく人工股関節を入れても、周りの筋肉や関節包は手術前のまま。そこへ脱臼を恐れて動かさない状態が続けば、さらに状態が悪くなっていく。

こうした悪循環に陥ってしまう方が出てくるのは、このような理由からです。

なお、脱臼を防ぐための動作の制限や注意点は、術式や状態によって異なります。必ず主治医の指示に従ってください。そのうえで、許された範囲で、無理なく身体を整えていくことが大切です。

リハビリが進まないときの考え方

術後のリハビリがなかなか進まないとき、「自分の努力が足りないのでは」「もう良くならないのでは」と、ご自身を責めてしまう方がいらっしゃいます。しかし、思うように進まないのには、これまでお伝えしてきたような理由があります。周囲の組織が硬いままであることや、脱臼への不安から動かしにくくなっていることは、決してご本人の頑張りの問題ではありません。

そこで大切にしていただきたい考え方が、三つあります。

一つめは、頑張りすぎないことです。 無理に動かしたり、強く鍛えようとしたりすると、かえって周囲の筋肉が緊張し、こわばってしまいます。痛みを我慢して行うことは避けてください。

二つめは、不安を一人で抱え込まないことです。 脱臼への不安は、多くの方が抱えるものです。どの動作がどこまで許されているのかを、主治医や担当のリハビリスタッフに具体的に確認してください。許された範囲が分かれば、不安は和らぎ、動かしやすくなります。

三つめは、「整える」ことから始めることです。 筋力をつける前に、まず硬くなった関節包や周囲の組織を、痛みのない範囲でやさしく緩めていく。この順番は、術前でも術後でも変わりません。

小さな変化でも構いません。昨日より少し動かしやすい、という実感を積み重ねていくことが、次の一歩につながります。

術前に整えておくことの意味

ここで、私どもが四十数年の臨床で大切にしてきた考え方に戻ります。

手術を受けるにしても、それまで「ゆうきプログラム」を積み重ねてきたことは、決して無駄にはなりません。

手術を成功させるためには、術後のリハビリはもちろん重要です。しかし、術前に、股関節周囲の状態をどれだけ整えておくかが、同じくらい大切なのです。

私どもが、筋肉を強化する前に、靭帯や関節包を緩めて、よい状態に整えることを重視してきた理由も、そこに収斂されていくことが、おわかりいただけるでしょうか。

ご自身の症状と、上手に付き合うために

手術を避けたい方も、手術を受けると決めた方も、そして手術を受けた方も、ご自身の症状と上手に付き合っていくことが必要です。

私どもが指導する、オーダーメイドの運動療法「ゆうきプログラム」は、そのためのものです。

もちろん、手術を受けるかどうかは、医師と十分に相談して判断することが前提です。そのうえで、手術前も手術後も、ご自身の身体を大切にしていただきたい。私どもは、患者様一人ひとりの力になれるよう、これからも親身にサポートしてまいります。